Birthday

1月7日は昨年末に死んだもきちの誕生日だ。生きていれば彼は12歳を迎えた。

なんとなく、勝手に、もきちとこの日を迎えられれば良いなと思っていた。特に意味など感じないし、良いことかどうかもわからない。でもそう思っていた。
だからそうならなかったのは残念だけど、別に悲しいわけでもない。
ただ、生まれて、一緒に過ごして、やがて滅びてゆく姿をすべて見せてくれたことにあらためて感謝している。

ここでは日記を書いては消すを繰り返しているが、いまあるものはこれを含めてたったの6日分で、昨年の八月末が最初のものだ。
また一区切りついた気持ちでいる。暦は便利だ。

ところで、まだもきちの遺影は飾っていない。写真立てだけがある。そろそろ飾ろうと思う。

その後のこと

もきちが死んだのは18日の正午である。コーラを飲みながらタクシーで帰宅。
その後、もうひとりの飼い主である元妻に彼の死を伝える。

翌19日、間接的にウェブサイトを作成した霊園がペットも扱っているため、一度も訪れたことのなかったそこへ向かう。
大柄のもきちは火葬に少し時間がかかるとのこと。待合室で瓶のコーラを飲む。他に人はおらず、落ち着けると思ったが、大きなガラス窓に体を叩きつけ続ける蝿が一匹いた。

骨壺は思いのほか大きく、小脇に抱えて電車とバスを乗り継いだ。

多くの人から、もきちの死を悲しむ言葉や励ましの言葉を頂いた。とてもありがたいことだった。

翌20日。もきちは18日の未明まで餌を食べていたため、その後の慌ただしさのせいで容器には食べ残しがそのままになっていた。それらや彼のトイレなどを片付ける。部屋がずいぶんがらんとした。

猫は環境の変化を嫌う。この家に越して6年と少し、大きな模様替えはしていない。部屋の掃除には洗剤を使わず水だけを使ってきた。
ふと、もうそうしなくても良いのかと気づき、もきちの物を片付けるだけのつもりが模様替えを兼ねた大掃除となってしまう。

夕方、休憩を兼ねて彼の遺影をプリントしようと出かけたが、大量の写真の中から一枚を選ぶことができなかった。写真立てだけを購入し帰宅する。花屋を少し眺めたが彼に合う花は見当たらなかった。

翌21日も引き続き模様替えと大掃除。
なかなか手を付けられない仕事部屋で小休止していると、机を一匹のハエトリグモが横切った。思わず笑ってしまったのは、このハエトリグモはずいぶん長い間この家にいて、幾度かもきちに狙われたもののすべての危機を彼の鈍臭さによって免れていたからだった。

この日記を書いている最中も、キーボードから液晶画面に、それからカーテンへと移動していった。カラスが鳴き始める時間だ。
まだこの家で暮らしているのだろう。

もっと遊ぼうぜ

今日の昼過ぎにもきちが死んだ。

昨日、動物病院から帰り、しばらくしてから呼吸が苦しそうだった。
もきちにとって通院はたいへんなストレスなので、通院した日の夜は具合を悪そうにすることが多かった。ただ、それを鑑みても連れていくべきだと判断させるくらいにはこのところの調子は良くなかった。

午前11時半、かかりつけの獣医の在院を電話で確認し、タクシーを呼ぶ。
病院に着く直前、口を大きく開けてもきちの呼吸が止まった。慌てて病院に駆け込み心肺蘇生をしてもらったが、そのままもきちは死んでしまった。

疲れただろう。良く生きてくれた。良く遊んでくれた。
初めて会った時のことを良く覚えている。その時からおれはもきちが好きだった。
それから彼が死ぬまで、ずっと絶え間なくおれはもきちが好きだった。

そんな存在があった。
いまはそんな希望がある。それは簡単なことじゃないと思う。
それを実現させてくれるくらいにもきちは優しく美しかった。本当にありがとう。

でも、悲しいじゃないか。寂しいよ。
もっと遊ぼうぜ、なあ、もきち。

oh baby

一ヶ月ぶりに飼い猫のもきちを動物病院に連れてゆく。

一定量の餌を口にするようになった頃、担当医が、病院でのもきちのあまりの暴れぶりからそれは看過できないストレスに感じられるし、試しにひと月ほど間を明けてから血液検査をしてみてはどうか? と提案してくれたのだったが、だからといって今日通院するつもりはなく、本当は鍼灸院に行くつもりだったのだ。

ところがその準備をしている時、トイレに立つもきちの足取りが一瞬ふらついたように見えたので行先を変更。
担当医は休みだったため、初めての獣医に採血と皮下点滴を施してもらう。
ふらつきから予想した貧血は起こっていなかったが、腎不全にまつわる数値はどれも悪化していた。
それは予想していたことなのだけれども、問題はその程度で、やはりまたしばらくは頻繁に通院しなくてはいけなくなった。

それにしても、もきちは今日も暴れた。嫌なのだろうなあ、と思ってもきちを見ていると凝っていた肩がさらに凝った。今日は、本当は鍼灸院に行くつもりだったのに。

帰宅後、当然もきちはたいへん疲れただろうが、おれもずいぶん疲れてしまい、すこし眠る。
夜に目覚めると、もきちが横で寝ていた。
おれが起きたのに気が付くと、腹が減ったと伝えてきた(自身の鼻をおれの唇に付けてくる時は、餌の要求である)。

このところのもきち

春先に末期の腎不全と診断された飼い猫のもきちだが、半年余を経て、このところは機嫌よく過ごしている。
診断結果から夏を越せるかどうかと覚悟していたのだったが、最近は涼しくなり、明け方にはベッドにやってくる。

当初は連日通院し皮下点滴をおこなっていたが、最近は餌を一定量食べるようになったので、ラプロスという錠剤とカリナールコンボという粉末のサプリメントを与え通院を減らしている。
見ている限り、もきちには通院のストレスがいちばん堪えているように感じられたので、これで良かったと思う。

もうすぐ俺はひとつ歳を取る。それから冬がきたら一緒に眠ろう。
その後、年が明けたらお前は12歳になる。盛大に祝いたいところだが、いくら考えてもいつもの一日がきっとお前には良いだろうと思う。

無題

リビングのエアコンはずっと稼働している。体に堪えるのでエアコンを稼働させていない寝室で昼寝をしていたが、気が付くと飼い猫のもきちがベッドにいた。
暑さや湿度が彼の体に障ってはいけないので、仕方なく体を起こしリビングに移動する。汗がひく。

夕方、もきちを連れて動物病院に向かう。待合室で雷光を幾度も見たが、帰宅しても雨は降らなかった。
帰宅後、病院嫌いのもきちが安心するまでしばらく家で雷光を見ていた。小雨の中、スーパーに夕食を買いに出る。まだ何も食べていなかった。

その後も稲光は続いたが、雨はもう降らなかった。皮下点滴を受けたもきちは具合が良さそうだった。眠たげな瞳でおれの腹の上にしばらく居座り、とうとうもたげていた頭を俺の胸に落とすとしばらく寝た。

今日は日記を書くつもりはなかった。まだ夏なので暑い。